悪魔のソース・博多んぽん酢を新しい博多の名物にしたい。老人のかなわぬ夢でなく、夢を現実にしてみたい。脳梗塞から三度の生還。ヨレヨレ、ボロボロになりながら、果たせぬ夢を追い続ける男に、強力な助っ人が現れた。平凡だったそれまでの人生が「まさか」の出来事で、がらりと変わる。一度ならまだしも、それが二度も三度も続いた。波乱万丈だが実に、愉快だった。人生の終末期を迎えた今、またもや「まさか」の驚きである。ヒルマン監督ではないけれど、信じられな~いのだ。人生、終わり良ければすべて良しなのだが、それはまだわからない。

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2004年01月25日

死んでたまるか

 二度目の脳梗塞で倒れて、ちょうど一年になる。最初は5年前、鹿児島へ向かう高速道路を運転中に発病した。脳梗塞が他の成人病と違い、特別に恐れられる理由は、重い障害が後遺症として残るからだ。ほんの一部の軽症者や、早期発見で治療が適切に行われた人以外は、マヒや言語障害などの重い後遺症は必ず残る。この点、二回も倒れたのに、さしたる後遺症もなく、健康な身体と生活を取り戻せたのは、非常に幸運だった。

 病気を完治するには、適切な治療がなによりも大切だが、「必ず良くなる」とか[死んでたまるか」という、人間としての気力が、その人の生命力を高める。精神の高揚があって薬も効くのであって、「オレはもうダメだ」と思ったら死んでしまう。

 二回目の時は、右視床に直径1cmの出血巣があり周囲に血腫が認められた。診察した医師は「血腫が広がると脳圧が上がり危険なので、手術が必要になるが、まだ中枢神経が血腫で侵されていないので、内科的療法で血腫の広がりを押さえます」と説明してくれた。

 手術に備えて、剃髪の準備も終わりクリクリ坊主にされる寸前だった。脳浮腫予防に点滴を開始したが、これが劇的に効いた。再出血も血腫の広がりも止まった。点滴は大型の注射器だ。600ccぐらいの薬液をポトポトと、しずくように落として静脈から入れていく。スピードを速めると心臓に負担がかかるとかで、一回の点滴に二時間もかかる。

 しかし、この点滴が脳血管障害の治療に抜群の効果をもたらす。脳梗塞には必ず、前触れがある。片マヒや知覚障害、言語障害、片側失明など、普段とは違う症状が突然、現れる。大抵は24時間以内に症状が消えるので「なんだ、思い過ごしか」とつい、見逃してしまう。

 ここが命の分かれ目になる。この時点で、適切な治療をすると、それ以後の再発を防止することが出来る。一回目の時は、車を運転中で、どうしても前へ車を進めたくない。サービスエリアに車を止めて、冷たい水を飲んだ。スッキリしたところで、再び、運転を始めたが、左足がなんだか重い感じがする。

 次のサービスエリアに車を止めた時には、左足の感覚が普通の状態ではなく、太ももをつねっても傷みを感じなかった。多少の知識はあったので「脳梗塞の前ぶれだ」と直感した。携帯電話で毎日新聞鹿児島支局へ電話、周辺の病院を調べてもらい、設備やスタッフが揃った鹿児島市民病院の「救急救命センター」へ車ごと転がり込んだ。救急車を手配するから、動かないで待つように指示されたが、無謀なことをしたものだ。

 二回目は早朝、前触れが来た。左半身に脱力感があり、口の左側がしびれていた。自分で起き上がることが出来なかった。この日は、成人の日で病院はどこも休んでおり、行くとすれば救急病院しかない。でも、行きたくないのだな。担架に乗せられピーポーピーポ運ばれる自分の姿を想像すると、救急病院へは行きたくなかった。そのうち、脱力感がとれて自分で起き上がれるようになった。

 ここでボクは人生を賭けた。今、考えると、愚かなことをしたものだと反省するが、かかりつけの神経内科があく、24時間後までこのまま安静にする。口のしびれが増大したり、言語に異常を感じたり、再度、立ち上がることが出来なくなったら、即座に救急車を呼ぶよう、家族に指示した。不思議なことに、食欲は十分で、朝も昼もたっぷり食べた。

 翌日、かかりつけの神経内科で診察を受け、頭部MRA撮影をし、出血が確認されたので、入院の手配をしてもらった。結果的には24時間もの間、素人判断で治療を放置したわけで、先生からきついお叱りを受けた。

 人生を賭けたのにはボクなりの理由があった。18年ぶりに発売を再開した「博多んぽん酢」を売りまくる必要があったのだ。年末年始は、一年中で一番、ものが売れる時期だ。とくに、ぽん酢は鍋の需要が多い年末から正月にかけてが一番の稼ぎ時。この時期に売れなければ、先の見込みは薄い。ヘタをすれば、会社を整理するしかないぎりぎりの状態だった。

 命が大事か、仕事が大事か。賢い人なら、まず、病気を治してから、仕事にとりかかるでしょうが、このまま救急車に乗れば、せっかく、つき始めた「ん」に見放されるような気がして「ん」を天にまかせることにした。結果的には「博多んぽん酢」が「ん」を呼んでくれたのか、病気も仕事も好転した。しかし、こんなバカなマネはもう、二度とやりません。

 食事やストレスが、成人病と深いかかわりがあることは、だれでも知っているのに、病気にかかる人が増える一方だ。死亡者は減少したが、発病者は増加の傾向にあり、しかも、働き盛りの 40、50歳代に増えつつある。治療方法の確立で死亡者は少なくなったが、言語障害やマヒなど、重い後遺症に苦しむ人は増える一方という。

 成人病が、食事やストレスと深いかかわりがあることが知られているが、その発症のメカニズムは不明のままだ。僕の場合、慢性高血圧、高脂血症、糖尿病をかかえ、薬を飲んでいたが、発病してしまった。しかも、二度。三度目は、ただではすまないだろうから、食事の改善を中心に生活全体を見直す必要がある。

 僕は、職業がら、健康に役立つ調味料をつくることが得意ですが、自分一人の力で、できるものではありません。皆さんに助けて頂きながら、調味料と健康とのかかわりについて、少し考えてみたいと思っている。  


Posted by 吉野父ちゃん at 13:20Comments(0)まさかの人生