2003年10月24日
18年の空白を経て
博多んぽん酢は、従来のぽん酢とは、ちょっと違います。一言で言って「ぽん酢であってぽん酢」ではありません。「ぽん酢ソース」です。「ソース」ですから、和風、洋風、中華といったジャンルを問わず、あらゆる料理に使える汎用性に優れています。うまい、マズイは人それぞれですから100%、満足してもらうことはできませんが「安全」だけは100%でなければいけません。
そこで、自分なりに商品づくりのポイントを三つ、決めました。
一つ、消えつつある郷土料理や質の良い農作物、食品を守ること。
二つ、良質の素材を提供してくれる小規模生産者を守っていくこと。
三つ、子供たちを含めた消費者に伝統的な味を伝えていくこと。
小理屈を言うようですが、わかりやすく言えば、博多という地域の特性を生かした新鮮で美味しく、あれこれ便利に使えるものにしたいと考えました。
博多という町は海にも山にも近い。魚でも野菜でも飛び切り新鮮なものが簡単に手に入ります。しかも安い。とくに、魚は種類も豊富で、最高のレベルにあるといっていいでしょう。
なにしろ、目の前が玄界灘です。新鮮だから味付けにあれこれ気を使わなくても、素材の持ち味をストレートに生かすか、ちょっと工夫するだけで豊富な味が楽しめます。
生でよし、煮てよし、焼いても揚げてもいい。どんな料理のしかたを選んでも、素材がいいから、なんでも美味しいのが博多です。
こんな土地は日本中を探しても、そうザラにはありません。フク料理一つをとってみても刺身、鍋物用、から揚げ用など食べ方に応じた売り方をしているし、しかも安い。天然ものはともかく、養殖フクの刺身なら、一人前、千円も出せばおつりがきます。東京や大阪では、目の玉が飛び出るかもしれませんが、博多では日常的なお惣菜なのです。
安くて旨いのは魚だけではありません。地鶏も、牛肉も、黒豚も旨い。博多は地理的には九州北部に位置するが、鹿児島まで車で3時間半、大分まで1時間50分、長崎なら1時間少々で行き着きます。週末になると九州中から買い物客が集まるし、野菜や肉を積んだトラックが毎日、やってくる。人もモノも博多へ、一極集中です。
旨いものだらけのマチですから、調味料もそれに相応しいものが必要になる。美味しいだけではなく、博多らしさを感じさせる「古くて新しい」もの。
「安全」という付加価値もつけたい。日本人にとって一番、身近な調味料と言えば醤油しかない。それなら、ぽん酢だ。酢は昔から健康に良いことで知られているのに、なぜか最近は、酢をあまり食べなくなった。なぜだろう。
11月になると大相撲の博多場所がはじまります。この頃になるとフクとアラ美味しくなります。フグと濁らず「フク」と呼ぶのはフクが福につながる縁起ものだからで、一方のアラというのは「クエ」のこと。大きなものは1mを越える巨体ですが、白身を鍋にすると「たまらない美味しさ」で、お相撲さんが「魚が旨い博多場所は最高です」とインタービューに答える姿は微笑ましい。
そのアラやフクちりになくてはならないのがぽん酢。もう一つの博多名物「かしわの水炊き」もぽん酢。魚も肉もぽん酢で食べるのが博多流で、ぽん酢は昔から博多っ子の生活のなかに定着していました。
九州中の酢を集めてみると、あるある。鹿児島の黒酢を筆頭に、柿酢、米酢、ユズ酢、カボス、スダチ、ダイダイ、サトウキビ酢、ぶどう酢など目移りするほどありましたが、もっと隠れた酢があるはずだ。アンテナを張り巡らせていたら、たまたま出張先の宮崎で出会ったのが「平兵衛酢(へべ酢)」だったという話は前稿で紹介したとおりです。
「博多んぽん酢」が、他社のぽん酢と違うのは、刻んだショウガ、大根おろし、豆板醤の3点セットがドカーンと入って、これまでのジャンルを飛び越えた新しい味が生まれたこと。この3つはそれぞれが、健康食品としての薬効成分を含有しているのはご承知のとおりです。ショウガには、血のめぐりを促進し体を温める作用があるほか、抗酸化作用もあります。唐辛子はご存知、カプサイシンですね。
ぽん酢に腐りやすい大根おろしを入れたのも理由があります。大根には炎症を鎮める働きがあることで知られています。消化酵素の働きで胃に優しいのですが、この薬効とともに大根のテクスチャーに注目しました。
テクスチャーという言葉を的確に表す日本語は見当たらないのですが、簡単に言うと食べ物の柔らかさ、固さのことで、食べ物を口に入れた時に感じる感触の総称とお考えください。魚や肉、野菜などそれぞれの食品が持ち合わせる素材には固いものもあれば柔らかいものもあるし、苦いものも甘いものもあります。それら、モロモロの味を楽しんでいただくのが、大根おろしであり、テクスチャーがかもし出す、まるみというか、優しさです。
「博多んぽん酢」ならではの美味しさの秘密です。
試しに白身の刺身をシソで巻いてぽん酢をちょこんとつけて召し上がれ。ワサビ醤油では味わえない美味しさと出会えるでしょう。焼肉カルビーやロースは、「たれ」で食べる濃厚な味とは違うさっぱりした美味しさに驚かれるでしょう。これが、博多んぽん酢とほかのぽん酢との違いです。バラエテー豊かな食べ方や使い方ができるのが特徴なのです。一本で二度、三度と違う美味しさが楽しめます。
「博多んぽん酢」が製造休止していた18年間は飽食の時代でした。しかし、時代というものは、10年とか20年とかいう時間の流れのなかで大きく変化します。今、環境や自然、健康に人々の関心が移り、食を見直す機運が高まりました。
「やっと出番がやって来たかな」。こんな気分に浸るとともに、新たな気持ちで、仕事に取り組んでいます。
そこで、自分なりに商品づくりのポイントを三つ、決めました。
一つ、消えつつある郷土料理や質の良い農作物、食品を守ること。
二つ、良質の素材を提供してくれる小規模生産者を守っていくこと。
三つ、子供たちを含めた消費者に伝統的な味を伝えていくこと。
小理屈を言うようですが、わかりやすく言えば、博多という地域の特性を生かした新鮮で美味しく、あれこれ便利に使えるものにしたいと考えました。
博多という町は海にも山にも近い。魚でも野菜でも飛び切り新鮮なものが簡単に手に入ります。しかも安い。とくに、魚は種類も豊富で、最高のレベルにあるといっていいでしょう。
なにしろ、目の前が玄界灘です。新鮮だから味付けにあれこれ気を使わなくても、素材の持ち味をストレートに生かすか、ちょっと工夫するだけで豊富な味が楽しめます。
生でよし、煮てよし、焼いても揚げてもいい。どんな料理のしかたを選んでも、素材がいいから、なんでも美味しいのが博多です。
こんな土地は日本中を探しても、そうザラにはありません。フク料理一つをとってみても刺身、鍋物用、から揚げ用など食べ方に応じた売り方をしているし、しかも安い。天然ものはともかく、養殖フクの刺身なら、一人前、千円も出せばおつりがきます。東京や大阪では、目の玉が飛び出るかもしれませんが、博多では日常的なお惣菜なのです。
安くて旨いのは魚だけではありません。地鶏も、牛肉も、黒豚も旨い。博多は地理的には九州北部に位置するが、鹿児島まで車で3時間半、大分まで1時間50分、長崎なら1時間少々で行き着きます。週末になると九州中から買い物客が集まるし、野菜や肉を積んだトラックが毎日、やってくる。人もモノも博多へ、一極集中です。
旨いものだらけのマチですから、調味料もそれに相応しいものが必要になる。美味しいだけではなく、博多らしさを感じさせる「古くて新しい」もの。
「安全」という付加価値もつけたい。日本人にとって一番、身近な調味料と言えば醤油しかない。それなら、ぽん酢だ。酢は昔から健康に良いことで知られているのに、なぜか最近は、酢をあまり食べなくなった。なぜだろう。
11月になると大相撲の博多場所がはじまります。この頃になるとフクとアラ美味しくなります。フグと濁らず「フク」と呼ぶのはフクが福につながる縁起ものだからで、一方のアラというのは「クエ」のこと。大きなものは1mを越える巨体ですが、白身を鍋にすると「たまらない美味しさ」で、お相撲さんが「魚が旨い博多場所は最高です」とインタービューに答える姿は微笑ましい。
そのアラやフクちりになくてはならないのがぽん酢。もう一つの博多名物「かしわの水炊き」もぽん酢。魚も肉もぽん酢で食べるのが博多流で、ぽん酢は昔から博多っ子の生活のなかに定着していました。
九州中の酢を集めてみると、あるある。鹿児島の黒酢を筆頭に、柿酢、米酢、ユズ酢、カボス、スダチ、ダイダイ、サトウキビ酢、ぶどう酢など目移りするほどありましたが、もっと隠れた酢があるはずだ。アンテナを張り巡らせていたら、たまたま出張先の宮崎で出会ったのが「平兵衛酢(へべ酢)」だったという話は前稿で紹介したとおりです。
「博多んぽん酢」が、他社のぽん酢と違うのは、刻んだショウガ、大根おろし、豆板醤の3点セットがドカーンと入って、これまでのジャンルを飛び越えた新しい味が生まれたこと。この3つはそれぞれが、健康食品としての薬効成分を含有しているのはご承知のとおりです。ショウガには、血のめぐりを促進し体を温める作用があるほか、抗酸化作用もあります。唐辛子はご存知、カプサイシンですね。
ぽん酢に腐りやすい大根おろしを入れたのも理由があります。大根には炎症を鎮める働きがあることで知られています。消化酵素の働きで胃に優しいのですが、この薬効とともに大根のテクスチャーに注目しました。
テクスチャーという言葉を的確に表す日本語は見当たらないのですが、簡単に言うと食べ物の柔らかさ、固さのことで、食べ物を口に入れた時に感じる感触の総称とお考えください。魚や肉、野菜などそれぞれの食品が持ち合わせる素材には固いものもあれば柔らかいものもあるし、苦いものも甘いものもあります。それら、モロモロの味を楽しんでいただくのが、大根おろしであり、テクスチャーがかもし出す、まるみというか、優しさです。
「博多んぽん酢」ならではの美味しさの秘密です。
試しに白身の刺身をシソで巻いてぽん酢をちょこんとつけて召し上がれ。ワサビ醤油では味わえない美味しさと出会えるでしょう。焼肉カルビーやロースは、「たれ」で食べる濃厚な味とは違うさっぱりした美味しさに驚かれるでしょう。これが、博多んぽん酢とほかのぽん酢との違いです。バラエテー豊かな食べ方や使い方ができるのが特徴なのです。一本で二度、三度と違う美味しさが楽しめます。
「博多んぽん酢」が製造休止していた18年間は飽食の時代でした。しかし、時代というものは、10年とか20年とかいう時間の流れのなかで大きく変化します。今、環境や自然、健康に人々の関心が移り、食を見直す機運が高まりました。
「やっと出番がやって来たかな」。こんな気分に浸るとともに、新たな気持ちで、仕事に取り組んでいます。
Posted by 吉野父ちゃん at 12:00│Comments(0)
│まさかの人生