悪魔のソース・博多んぽん酢を新しい博多の名物にしたい。老人のかなわぬ夢でなく、夢を現実にしてみたい。脳梗塞から三度の生還。ヨレヨレ、ボロボロになりながら、果たせぬ夢を追い続ける男に、強力な助っ人が現れた。平凡だったそれまでの人生が「まさか」の出来事で、がらりと変わる。一度ならまだしも、それが二度も三度も続いた。波乱万丈だが実に、愉快だった。人生の終末期を迎えた今、またもや「まさか」の驚きである。ヒルマン監督ではないけれど、信じられな~いのだ。人生、終わり良ければすべて良しなのだが、それはまだわからない。

2011年04月03日

浮御堂で思ったこと。

 琵琶湖に浮かぶ「堅田の浮御堂」の先代住職夫人から電話をもらった。用というのは、昔あったオニオンソースは今でもあるかという問い合わせだった。オニオンソースというのは、文字通りたまねぎを煮込んだお肉のソースで、フランス料理の基本のソースの一つ。創業時の主力商品として位置づけていたのだが、腐りやすくて日持ちしにくいのが難点で、いつの間にか姿が消えた。浮御堂夫人の電話は、今では幻の味となったあのソースの復活を願うものであった。
 数日が過ぎた土曜日の早朝。テレビの、みのもんたを見ていたら、岩見隆夫さんが出ていてこの電話のことを思いだした。岩見さんとは同郷同窓の友人で、ともに薫陶を受けた先輩を偲ぶ会が大阪で開かれた機会に二人で琵琶湖を周遊した。一昨年春のことだ。JR大津駅で降り、タクシーで湖の西岸を三十分も走ると浮御堂に着く。この一帯は、渡り鳥の雁が舞い降りるので「堅田の落雁」の別名があり、近江八景の一つとして知られる。境内の樹齢六百年という老松と、琵琶湖の眺望がなんとも素晴らしい禅寺だ。
 調味料を作る立場になって、しみじみ感じるのだが、皆さんの「美味しい」という一言が嬉しくて、毎日、たまねぎの皮をむいたり、大根をおろしている。手をかければかけただけ、思いを込めれば込めただけ美味しくなるような気がする。
 「美味しい」と感じる心の動きは、ひとりひとりに異なり、時とともに移ろう、あいまいで捉えどころのないものです。そんな感覚を追い求め、だれかの「美味しい」を本気で満たそうと思ったら、人生をかけるぐらいの覚悟と長い時間が必要なように思える。

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Posted by 吉野父ちゃん at 08:44│Comments(0)そうす亭日乗
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